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「どうするんだ? このままではジリ貧だぞ」
一旦は空に追い返したヘリも、また直ぐに戻ってくるはず。実際、お腹に響くあの音がまた背後から迫ってきている。こんな急ごしらえの偽ロケットランチャーに二度も騙されてくれるとは思えないし……。
「大丈夫、この先に高架があったでしょ? あれを使おうよ」
ほどなくして目の前にボロボロの高架が見えてきた。戦前はこの山脈を横断する鉄道が通っていたのだが、開戦早々に双方の勢力が真っ先に砲撃や爆撃で破壊してしまったのだ。線路部分が無惨に崩れ落ち、橋脚だけが残った姿はまるで竜の背骨のよう。
「よし、行けそう!!」
ゴロゴロと転がる瓦礫をよけつつ、焼け残った橋脚の間をくぐると一気に林の中の道なき道へと突き進む。この先は特に山が険しくて、ヘリではとても入り込めないような狭くて深い谷が続いているのだ。そのまま木々の隙間を突っ走り、もう追手が来ないことを確認するとようやく一息ついて顔を見合わせた。
「もう、死ぬかと思った」
「全くだ」
本当に、死ぬほど怖かった。今、二人で笑いあえているのが奇跡みたい。
どちらかがやられていたら……と思うと、今更ながらにハンドルを握る手の震えが止まらない。じんわりとにじみかけた涙を懸命にこらえていると、相棒がぽんぽんと軽く背中を叩いてくれた。
「よくやったな。おかげで助かった」
いたわるように微笑んでくれたけれども、よく見ると顔が青ざめていて、彼も本当に怖かったのだとよくわかる。
「ふふ、君の機転のおかげだよ」
彼の瞳を覗き込んで言うと、感謝しろよと冗談めかして前を向いた。
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