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林の奥で車を止めると、緊張から解放されて力が抜けそうになる。このまま注意力を欠いたまま国境に向かうわけにはいかないので、水とドライフルーツで一服してから尾根を越えることにした。
「見て、杜松の実がいっぱい!! おじいちゃんのところに持っていこう」
陽光を浴びて瑠璃色に輝く木の実がたくさん。すっきりとさわやかな香りのこのスパイスは、身体に溜まった毒素を排出する効果があるのだそう。料理にも合わせやすく、肉の臭み消しに使っても良いし、野菜と一緒に酢漬けにするのも美味しい。お土産に持って行ったらきっと喜んでくれるだろう。
「まったく、九死に一生を得たばかりだというのに何を能天気な」
呆れながらも彼は杜松を摘むのを手伝ってくれて、あっという間にカゴはつやつやした実でいっぱいになった。文句を言いつつも、晴れた日の空みたいに澄んだ蒼い瞳はとても優しい。
そこにいるのは観測手という一個の戦闘単位なんかじゃない。僕の大好きな、かっこよくて頼りになる、大切な幼馴染だ。
人心地着いた僕たちはまた北へと向かう。
国境までは、あと少し。
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