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「で? 何か壊れたか?」
孫に甘い好々爺から急に戦士の顔に戻った爺さんが、琥珀色の目を光らせて低い声で尋ねる。
「いや、いつものを頼みに来ただけだ」
「そうか」
軽く息をついたじいさんの顔がわずかに穏やかになった。どうやらかなり心配をかけていたらしい。
「うん、定期的に見てもらわないと心配だからさ」
「ついでにじいさんの顔を見に来た」
「わかったわかった。見てやるからさっさと入らんか」
じいさんは俺たちを斜面に貼りつくようにして建っている、今にも崩れ落ちそうな小さな家に招き入れた。柘榴の果樹園に囲まれた、石を積んで泥で固めた簡素な小屋。中は小奇麗に片付いていて居心地は良さそうだ。
入ってすぐの土間は台所を兼ねていて、居間には古びたじゅうたんが敷かれている。壁際に申し訳程度の食器棚。壁には所狭しと調理器具が吊るされている。奥にはじいさんの寝室と、その隣は物置だったはず。
「あれ? 納戸が片付いてる。じゅうたんも新しいね」
「こら、よそ見をしてないでさっさと来い」
物置をのぞき込んでいる相棒をうながし、爺さんに続いて地下に降りた。
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