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山中に網目のように掘りめぐらされたトンネルをぐるぐると大きく迂回しながら帰投すると、隊長に労をねぎらわれた。どうやら思っていた以上の戦果を得られたらしい。俺たち寄せ集めの「革命家」にとって、こうした鹵獲品は武器を手に入れられる貴重なチャンスだ。
仲間たちは今日一番の獲物の対物ライフルを手にして上機嫌。
汎用品の銃弾が使えるから弾薬の補給も容易だ。今後おおいに活躍してくれることだろう。
鹵獲品の分配は先輩方にお任せすることにして、俺たちは休息のために宿舎としてあてがわれた小さな家に帰った。
「ふぅ、今日も疲れた」
手早く銃の分解清掃を終わらせて、丁寧に組み立てながら彼が言う。
「たしかに緊張したな」
「そろそろメンテナンスに行かなきゃいけないかも」
「お前の銃はじいさんの特製だろう? 調整が必要ならアリアナまで行かないと」
彼の持つ銃は百年以上も前に北方の雄と恐れられるリリャールで作られた木製銃床のボルトアクションライフルだ。もっとも、中身は隣国アリアナに住んでいるティルティス人ガンスミスが、手に入る部品すべてを組み上げて、どんな最新型にも負けない精度と操作性に改造してくれた。世界中どこを探しても二つとない、じいさんの技術と愛情のこもった特別な品だ。
サプレッサーははるか北方の氷結海に面したヤルヴィ製。ずっと東の草原から来た友軍が運んできてくれた。
「うん。一緒に行くよね? ついでに君のも改造してもらったら?」
「いや、これは故郷から持ってきた親父の形見だからな。調整だけで充分だ」
俺の武器はリリャールで五十年も前に作られた骨董品の自動小銃で、照準器は世界最北の内陸国ヴィトラント製。愛用のジャケットは軍用ではなく西の工業大国ジュチカのアウトドアブランドのもの。
俺たち「革命家」だけでなく、装備までもが世界中からの寄せ集めだ。
かちゃかちゃと、部品のこすれる音がかすかに響くことしばし。二人とも装備の点検と整備が終わった。
ここから先は「戦士」ではなく、「人間」としての俺たち二人の時間。
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