女の……

1/1
8人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
現在、私が勤務している会社で体験した出来事だ。 数ヶ月前、私の会社には6名の男女が転職してきた。 その中の小山(こやま) 優奈(ゆうな)さんという女性は大変覚えがよく、見た目も可愛らしかったので、直ぐに会社で人気者になった。 彼女は明るく人懐こい性格だった為、上司や同性にもとても好かれていた。 だが、会社の懇親会で彼女が社長に直々に褒められた翌日から、彼女の表情が徐々に曇りがちになっていったのだ。 上司が面談で聞いてみたところ、一緒に入社した同期の女性に嫌がらせを受けているらしい。 だが、証拠がない。 結局、嫌がらせが原因で優奈さんは会社を去ってしまった。 けれど、その直後から、嫌がらせをした同僚――咲穂(さほ)さんのデスクで不審な事が起きる様になる。 咲穂さんは、デスク周りやデスク上に季節の草木を飾る事好きだったのだが、その草木が「千切れる」様になったのだ。 前日の朝飾ったばかりの草木が、翌日出勤して来てみると、葉や枝を酷く(むし)られ、折られ、バラバラにされた状態で彼女のデスクの周辺に散乱しているのである。 最初は泥棒かとも思ったが、侵入の痕跡はなかったらしい。 社内の誰かの嫌がらせか、ということにもなったが、いかんせん犯行が行われていたのは深夜であったのと、その時間は警備員が巡回していたこともあり、社員には不可能だろうという話になった。 ただ、草木をバラバラにされてばかりではあまりに不愉快だということで草木を飾らなくなった咲穂さん。 すると、飾らなくなったその日。 ランチに出掛けた際、ビルの入り口にある回転ドアで腕を挟まれ、咲穂さんは腕を折る大怪我をしてしまった。 目撃者によると、咲穂さんは救急車で運ばれる時、パニック状態になりながら「小山がいた」と叫んでいたらしい。 その日以降、植物を置き忘れると自分が怪我をする様になった咲穂さん。 彼女のデスク周りは今では、大量の観葉植物に囲まれ、どちらがデスクの主かわからない位になっている。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!