14人が本棚に入れています
本棚に追加
今から23年前、私が高校2年生だった時のこと。
私のクラスには、町子さんという女の子がいた。
明るくて誰からも好かれていた町子さんは、実家が花屋だった事もあり、新学期の係決めで、植物係に立候補する。
植物係というのは、毎朝、季節の花や草木を学校に持って来ては花瓶にいけて飾る係の事だ。
以降、毎朝欠かす事なく季節の花を教室の後ろの棚の上に飾ってくれていた町子さん。
ある日、私が部活の朝練で何時もより教室に早く着いた際、丁度女子トイレの方から花をいけた花瓶を持ってくる町子さんと鉢合わせた。
軽く挨拶をかわした後、町子さんは花瓶をセットする。
が、その時、私は町子さんが――まるで鎮魂歌の様な物悲しい歌を歌いながら、何時もの棚の上ではなく、とあるクラスメイトの机の上に花瓶を置いているのに気が付いた。
花瓶を机に置いたまま、「かわいそうに」と呟く町子さん。
暫くして町子さんは、花瓶を所定の位置に飾り直した。
その日の朝の会で、先生から、とあるクラスメイトが亡くなったことを聞かされる私達。
亡くなったのは、町子さんが花瓶を飾っていた机の席の生徒だった。
以降、町子さんが誰かの机の上に花瓶を飾っている姿を見たことはない。
最初のコメントを投稿しよう!