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すると、加奈ははにかんだ笑顔で「いいよ」と言いましたがすぐに「ちょっと待って」と言い出しました。
「やっぱり僕のこと愛してないの?」
「そ、そうじゃなくて……」
「だったら何?」
僕はもう、加奈の服に手をかけていました。
あれだけ体調が悪かったのが嘘のように、肉体は精力に満ちているのが分かりました。
「あのね……」
加奈は、僕の唇に軽く口付けた後、申し訳なさそうにこう言いました。
「私の小説の設定でね、1個謝らないといけないことがあるんだけど」
「うん」
「この国……王族と庶民って、結婚できない決まりになってるんだよね」
「え」
「で、私……庶民で孤児設定」
「と、いうことは……?」
「…………ごめん、このままだと結婚できない」
何と言う事か。
最後の最後で、彼女がいかに残酷な小説を書いたのかが分かってしまいました。
「じゃあ、俺生き返ってもう1回転生しなおす?」
「それってできるものなのかな?」
「時間を戻す魔法とか、あるんじゃないのか?」
加奈の小説には、そういうタイムリープ、と呼ばれる概念が使われているものがあったことを思い出しました。
「ごめん。この小説にはそれない」
「この世界はそもそも君の世界だろ? 君の思い通りにならないのか?」
「思い通りになるんだったら、私はヒロインに転生して、綺麗な姿であなたと再会したかったよ」
そうしなくて良かったと、僕はこっそり思いながら、ふと良いアイディアを思いつきました。
「じゃあ、王族と庶民が結婚できるようにすればいいってこと?」
「あー……できるのかな?」
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