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私の父方のお墓は、最寄りの駅から3時間以上かかる、かなり深い山の中にある。
普段であれば、いつも家族でお墓参りに行くのだが、私が高校3年生の春のお彼岸の時はどうしても両親の時間が取れず、私が一人でお墓参りに行くことになった。
と、言っても、近隣に人は住んでいないし、携帯も通じない山の中なので、事前に両親にしっかりと地図を書いて貰い、お墓参りに向かう。
そうして、私は地図を持ち、お墓に向かったのだが――山の入り口についた瞬間、突然強風が吹き、地図が浚われてしまったのだ。
仕方なく、記憶を頼りに歩く私。
すると、1つ目の分かれ道の際――なんと、分かれ道の片方に1輪の黒いチューリップが落ちていた。
とても気味が悪く思った私は、チューリップがあるのとは反対の方向に進んでみる。
と、2つ目の分かれ道にも、片方に黒いチューリップが落ちているではないか。
不気味に感じた私はチューリップがあるのとは反対へと進んでいく。
その後も、分かれ道がある度に、必ずチューリップが落ちていて……敢えて、チューリップが落ちているのとは逆の道を選んで進んだ私。
やがて辿り着いたのは――父方のお寺ではなく、荒れ果てた古いお墓そのものだった。
しかも、大量に黒いチューリップが供えられている。
恐怖を感じた私は、慌てて今来た道を駆け戻った。
が、今度は分かれ道の両方に黒いチューリップが置かれているではないか。
私は怖くて――半ばパニックに陥り、叫び出しそうだったが、何とか自分自身を落ち着かせ、先ほど来たのとは反対の道に戻ってみる。
そうして、道を逆に辿った私。
けれど辿り着いたのは何故か、また、あの荒れ果てたお墓だった。
しかも、先ほど見た時より、供えられている黒いチューリップの本数が増えている。
以降、何度山の入り口に戻ろうとしても、あの荒れ果てたお墓に戻されてしまった私。
どうしようもなくなってしまった私は、その荒れ果てたお墓に、父方のお墓用に持ってきたお花と線香を供え、懇願した。
「お願いします。ちゃんと拝みますから、もう、返してください」
瞬間、ポンと私の肩に手が置かれる。
「久しぶりだね。こんなところでどうしたんだい?」
振り向いてみると、そこにいたのは父方のお墓があるお寺のご住職だった。
気付くと、目の前にあったはずの荒れ果てたお墓も、いつの間にか消えてなくなっている。
その後、無事にお墓参りを済ませた私。
以降、あの荒れ果てたお墓には2度と遭遇していない。
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