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1話ぼくと彼女
「舜二郎くん!こっちこっち〜」
「あわっ、翠蘭ちゃん!来てくれたんだ。危ないから来ちゃダメだよー」
僕はあわあわと緊張と早くここから連れ去らなきゃという気持ちに苛まれた。彼女はにこにこと何も怖がらずに僕を見つめている。
こんな理数学部の多い、京木神鏡大学に来てはならない。ましてや、この大学は女子は少ないし、勉学にしか頭にないような学力重視のやつらばかりだ。口も達者でキザなやつが多い。女子を見つければ、すぐに追ってきてしまうだろう。
とにかく、僕は慌てて、彼女の手を引いた。
「こっち!」
「え!舜二郎くん、どうしたの?シタバはこっちにあるよ?」
僕は彼女の言葉を耳にせずに、無我夢中に二人だけになれる世界へと走り連れて行く。
僕の大切な彼女を他のやつには見せたくない。
彼女、弓町 翠蘭は18歳の大学一年生だ。彼女はこの県の中でも有名なお嬢様大学に通っている。教法蓮学院女子大学だ。
僕はこの話しの中で、主人公をさせてもらっている監原 舜二郎。19歳の大学二年生だ。
僕はこれまで憂鬱な代わり映えのしない世界を眺め、ひたすら向かっていただけだった。もともと、男子ばかりが多い中高とさらに大学に進学した。これも、周りの友人たちが進学するから進学を選んだような僕だった。
親からは長男だからと期待の眼差しを向けられ続けていた。次男の弟は、僕とは違って、可愛い容姿を使っては、わがままがどこへでと通ずる姿に嫉妬を抱いていた。ただ、僕の大切な弟だから、僕は家を出て、一人暮らしのアパートに離れた。
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