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それでも5回目の引越しを再びして、浅草署内の単身寮に戻ると、慌ただしい日常が待ち構えていた。 それこそあっという間に、2年が経過してノンキャリアとしては順調に、俺達三人は巡査長になっていた。そろそろ本格的に異動の辞令が来るだろうと思っていたら、同じようなタイミングで異動命令が出された。 そんなわけで久しぶりに同期三人いつもの店で、報告会となった。 「ねぇ、受かった?」 先に飲み始めていた望月が、ばったり会って一緒に入店した俺と国定に声を掛けてきた。 「ははぁ、さてはお前は受かったんだな。」 「ご名答!で、二人は?もちろんだよね。」 俺と国定は、顔を見合わせて苦笑いした。 三人は、高校を卒業してすぐに警察学校に入学しているのでノンキャリだ。そんな彼らの班が、警察学校でキャリア組を超える成績で卒業を果たした事などで、色々あって人事院から認められ大卒程度の総合職試験、つまり国家公務員採用試験の受験資格を得られて合格したのだった。 「それが今回の人事異動に繋がるってわけか。腕試しのつもりだったんだが、やめときゃ良かったな。」 国定が、眉をしかめた。 「そうだね。でも、何かキャリア組の奴らにムカついちゃってさ。へへ。で、何処になったの?」 負けず嫌いの望月らしい挑み方だ。それに合格したからと言って、高卒ノンキャリの雄国班出はついてまわる。また大っぴらに言う訳にもいかない内部事情を抱えていた。 「嵌められた感じだな…。俺は、刑事部で新潟県警に出向だ。」 「新潟?へぇ、出向先にしてはえらく地味じゃないの。私は、スコットランドヤードだよ。」 「マジか?! 国定は? 」 「公安だ。」 三人とも互いの境遇に、絶句してしまった。
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