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「なによ、笑いなさいよ、どうせわたしは不埒な女よ、婚約者がいながら別のひとを好きになっちゃう、ダメな女よ!」
「この問題における最大の笑いどころは、婚約者と好きになったひとが同一人物であることに、本人が気づいていないってところだろう」
「――なにを言っているの。それじゃあまるで、わたしの結婚相手がダグみたいじゃない」
「そうだと言っている。むしろなんで気づかないんだ。名前でわかるだろう。わざとなのか?」
「でも家名が」
婚約者はスロー子爵の次男のはず。対してダグラスは、十四歳のときに我が家へ入った使用人だ。さらにいえば、婚約者は王宮で仕事をしているのではなかったか。
リズベットの疑問をダグラスは潰していく。
「タームはうちが持っている男爵位のひとつ。兄がスロー子爵を継ぐことになってるから、タームを貰った。王宮の仕事に関していえば、やってるよ。お嬢様が学院でお勉強しているあいだにね」
「爵位って、そんな簡単に手に入るものなの!?」
「俺の祖父はあのザード侯爵だ」
侯爵閣下は、愛妾をたくさん持ち、子どもをたくさん作った男としてよく知られている。いくつも爵位を持っており、それぞれの子へ渡している。ターム男爵もそのひとつにすぎない。
「祖父の代では、税収を上げるために爵位をたくさん作って付与したらしいな。子沢山のザード家には、多くの爵位が与えられた。持て余している男爵位に、たいした価値なんてないよ。王子のところでやっている仕事は、爵位の見直しだ。祖父のツケを払わされている」
「うちも爵位整理の対象で、ダグはずっとわたしを見張っていたのね」
体を悪くして第二子を望めなくなったグレニスタ家において、リズベットが女性伯爵となるに相応しいのかどうか。
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