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マモルが無事に夜を明かしたことを大人たちは喜び、よく頑張ったと口々に褒め、母は涙さえ流した。それ以降すっかり夜の歌声が聞こえることもなくなり、おかげ様が現れる気配は微塵もなくなった。ひと月が経つ頃には、マモルの一家は以前と同じ夜を迎えるようになった。
秋の終わりと冬の訪れが感じられる季節、それでも縁側には昼間の陽気が残っていた。陽が傾き、橙の夕陽が庭を貫くように差し込んでいる。
「にいちゃん、どこー?」
幼いコトミは絵本を抱えてマモルを探していた。コトミは小さな身体にお気に入りの大きな絵本を抱え、いつでも構わず読んでくれとねだる子どもだった。
ご飯の支度があると母は相手にしてくれず、きょろきょろと庭を見渡して、二番手の兄を探していた。妹よりも男友達と遊ぶことの好きな彼だが、今日は近所の友人が風邪をひいて遊べないことを聞いて、早々と家に帰ってきていた。
昼寝から目覚めると、居間でテレビゲームをしていた姿はなく、母に尋ねると庭で遊ぶと言っていたらしい。コトミは絵本を抱えたまま、靴をひっかけて家の裏手に回った。
「あー、にいちゃんおったー」
見慣れた後ろ姿を見つけ、ぱたぱたと駆け寄る。その背が振り向かないので、コトミは不思議にその顔を覗き込んだ。
「なにたべとんの?」
裏庭の隅にしゃがむ兄はコトミの方を見向きもせず、冷蔵庫から盗んだ鳥の生肉を一心に貪っていた。
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