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 目を覚ますと、外から鳥の鳴き声が聞こえてきた。  襖の前で目を覚ましたマモルの視線の先、カーテンの隙間から細い光が差し込んでいる。朝陽だと気が付くと共に、恐ろしい一夜が明けたことを知った。見上げた天井では、不吉な彼岸花が首を垂れている。締め切った部屋では、風はそよとも吹いていない。  恐る恐る窓に近づき、マモルはカーテンをそっと開けた。ガラスの向こうに見慣れた庭の景色がある。母が植物を育てているプランター。横の植木鉢では、夏休みの宿題で育てた向日葵が、枯れた姿のまま項垂れている。天には青く薄い空が広がり、筆でさっと拭ったような白い雲が流れていた。  やっと、終わったんや。  ほっと息をつき、鍵をひねり、カラカラと窓ガラスをサッシの上で滑らせた。  瞬きをすると、朝の景色は消えた。雀の声は消え、月も星もない一面の夜闇が目の前を包んでいる。真ん中にある一層暗い子どもの影が、窓の外からこちらの顔をぐうっと覗き込んだ。  マモルという自分の名前を、たくさんの子どもの声が呼ぶのを聞いた。
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