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神代くんと再会してから、佐伯と2人で会っていない。
元々、好きなワケじゃないし、それに…こんな自分を神代くんに、知られたくないという気持ちが強かった。
それなのに、佐伯は事ある毎に経理部に顔を出しに来る。
「富樫、これなんだけどさ。申請ってどうやればいいの?」
「また?これ、初めてじゃないよね?」
何度も申請した事のある書類を持って、やってくる。
「せんぱぁい、佐伯さんって実は…先輩の事、好きなんじゃないですかぁ?」
「そんな事あるわけないでしょ?単に同期だから聞きやすいだけ」
「でも、あの2人。最近うまくいってないみたいですよ?」
「あの2人って、佐伯と桜庭さん?」
「他にいます?」
「今、誰の話題だと思ってます?」なんて、緒方に真顔で突っ込まれ、書類に目を通す。
”今日、19時に”
佐伯が申請に件で経理部に来たのは、これが理由。
私は書類に張られた付箋を剥がし、ごみ箱へ捨てた。
迂闊だった、今までは自分のスマホケースの中に貼り、家で捨てていたのに…神代くんとの事で頭が一杯で、他の事に構う余裕がなかった。
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