忘れえぬ想い

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月末月初の経理部の忙しさと言ったら、半端ない。 そこへ期限を守らなかった書類が届くと、部署全体がダークな空気になる。 「冨樫、悪い。これいいかな?」 「提出期限は先週でしたけど?」 「先週は直帰が多くてさ…ダメかな?」 「せんぱーい、いいじゃないですかぁ。佐伯さん困ってるみたいだし」 「おっ、サンキュー。じゃ、よろしくな」 口出ししてきた後輩である、緒方をチラっと軽く睨み、佐伯が置いていった書類に目を通す。 「先輩いいなぁ。イケメンで仕事もできる佐伯さんと同期でぇ」 「同期ってだけでしょ」 「同期会て頻繁にやってんですよねっ?私の代ってハズレばっかでぇ行く気もしないですよぉ」 同期には当たり年もあれば、外れ年もある。 当たり外れ、なんて人に対して失礼極まりないし、相手だって同じ事を思っているかもしれない。 ただ日々の大半を会社で過ごすからには、色恋抜きにしても、助け合っていける仲間がいい。 「佐伯には彼女がいるでしょ」 「あー…あの桜庭さんですよねぇ。なんで男って、ああいうのに弱いんですかね?」 「ああいうの?」 「あの話し方だって絶対わざとだし、男性社員と話す時に上目遣いすんのも、わざとじゃないですかっ」 「桜庭さん、身長低いからね」 舌っ足らずの話し方や上目遣いが、わざとだったとしても、誰にも迷惑なんて掛けてないじゃないか。
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