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そこからの記憶はよく覚えていない。
突然大病院に連れて行かれて、色んな検査を受けたこと。看護師さんに覚えてるかな〜って笑いながら手を振られたこと。病院の先生と看護師さんが険しい顔で検査結果を見ていたこと。
もう一度診察室へ通された。
無機質で、くぐもった診察室。
何故か母の周りには男の看護師さんが二人いて、物々しい雰囲気だった。
顔が真っ青な母の顔を眺めていたが、母は私が見ていることにも気が付かないようだった。
「残念ながら、伊吹さんに残された時間は、一年です。」
___え?何が一年なの?
私の女子高校生だ。
ドラマだって観るし、ラノベだって読む。
だから、[残された時間]の意味は薄々わかっていた。でも、認めたくなかった。
母は泣き崩れた。
「っ・・・せっ・・・先生!なんで!この子はっ!伊吹は・・・、30歳までは生きれるって!」
「ちょっと!どういう事・・・?」
狭い診察室の人々の視線が私にぶつかってくる。
「…、お母さん、伊吹さんには言っていなかったんですか・・・。」
先生が母のことを見ていた。母は先生から目をそらす。
先生が言うにはこうだった。
生まれたときから、私は奇病にかかっていた。
二度と治らない病気。
最初に口が聞けなくなる。その後、耳も聞こえなくなり、目も白黒でしか見えなくなっていく。
血を吐きながら、それでも意識は混濁せず、苦しみながら死んでいく奇病。
「い・・・いや・・。嫌だっ!」
駄々っ子のように首をふる。
無駄な行動なのに、体はそうする。
そうしないと息が、自分が保てない_____。
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