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「ううっ、えっ……眠りなさいでしょ? でも眠れないの」
『イケてるおれのこと思い浮かべて寝ろよ。夢に出てきてやる』
「あはは……うん。頑張って思い出す」
『なんだよ、それ。おれはいつだってかっこよかっただろ?』
「どうかなぁ? そうだね。逢えると思うと……眠れる気がしてきた」
『大丈夫、きっと眠れる。あと、二つめのお願いなんだけど』
「何?」
『おれの母さんのことなんだ。すでに実花が何度も会いに行ってくれてるのは知ってる。……ありがとうな』
「ううん。だって篤史とお母さん二人きりの家族だもん。お母さん、私と会う時はいつも笑顔だけど……本当は辛いと思う」
『あのさ……じつは母さん、つきあってる人がいるみたい』
「えっ⁈ そうなの?」
『死んでから母さんのこと見ていてわかった。同じ職場の人で、相手もバツイチらしい』
「……嫌なの?」
『いいや。真面目で、ちょっと不器用なくらいの人みたいだし。幽霊って便利だよね。こっちは見えないから素を観察できるというか。だから、あの人なら安心だと思った』
「そっか。私のこともずっと見てたって言ってたもんね……えっ? 着換えやお風呂も?」
『婚約までしてたのに、何をいまさら。ま、そんなに見てないよ。って、何言い訳してんだ?』
「ふふふっ」
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