君にお願いしたいこと

4/6

4人が本棚に入れています
本棚に追加
/86ページ
『とにかくさ、母さんはなんかあの人のことでなんか気兼ねしてるみたいだから、もしおれが理由なんだとしたら大丈夫だって伝えて欲しいんだ』 「え〜っ? 難しいな」 『それとなくでいいんだって。生前言ってたとかでさ。くれぐれもおれが幽霊になって見てたなんて言うなよ。母さん、あれでけっこう怖がりだから』 「お母さんなら幽霊でも篤史に会いたいって言うよ」 『……ごめんな、実花にこんなこと頼んで。半年くらいでいいから』 「なんで? もうすぐ私のお義母さんになる人だもの、半年なんて」 『そうじゃなくなっただろ?』 「……悲しいこと言わないで」 『最後のお願いも言わなきゃ……だな』 「篤史?」 『……くそ、やっぱ、これは言いたくないな……』 「どうしたの?」 『いや、言わなきゃ。おれも安心して逝けないし』 「だから、何?」 『幸せになってくれ』 「漠然としててわからないよ」 『あのさ、実花は二十四歳だろ? まだ若い』 「篤史だって二つ上なだけでしょ?」 『じゃなくて! 言いたいのは……好きなヤツと結婚して長生きしてほしいってこと。おれのことは……忘れて』 「なんで今そんなこと言うの?」 『今しか言えないからだろ。おれだって辛い。でも……実花にはずっと笑顔でいて欲しいから』 「ズルいよ、そんなこと言うの。……無理に決まってる」
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加