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『とにかくさ、母さんはなんかあの人のことでなんか気兼ねしてるみたいだから、もしおれが理由なんだとしたら大丈夫だって伝えて欲しいんだ』
「え〜っ? 難しいな」
『それとなくでいいんだって。生前言ってたとかでさ。くれぐれもおれが幽霊になって見てたなんて言うなよ。母さん、あれでけっこう怖がりだから』
「お母さんなら幽霊でも篤史に会いたいって言うよ」
『……ごめんな、実花にこんなこと頼んで。半年くらいでいいから』
「なんで? もうすぐ私のお義母さんになる人だもの、半年なんて」
『そうじゃなくなっただろ?』
「……悲しいこと言わないで」
『最後のお願いも言わなきゃ……だな』
「篤史?」
『……くそ、やっぱ、これは言いたくないな……』
「どうしたの?」
『いや、言わなきゃ。おれも安心して逝けないし』
「だから、何?」
『幸せになってくれ』
「漠然としててわからないよ」
『あのさ、実花は二十四歳だろ? まだ若い』
「篤史だって二つ上なだけでしょ?」
『じゃなくて! 言いたいのは……好きなヤツと結婚して長生きしてほしいってこと。おれのことは……忘れて』
「なんで今そんなこと言うの?」
『今しか言えないからだろ。おれだって辛い。でも……実花にはずっと笑顔でいて欲しいから』
「ズルいよ、そんなこと言うの。……無理に決まってる」
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