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「うん。驚いちゃった。そんなそぶり、かけらもなかったから」
『きついこと言った時もあったから、ダメもとだったんだけど……実花もおれが好きだったの?』
「正直、最初は全く。……でも一緒に仕事してるうちに、かっこいいなって」
『ふっ、そうか、そうか。おれって実はかっこいいんだよ』
「あ~、知らない。言いすぎた」
『実花』
「ん?」
『そろそろ電話切らないと』
「……どうして?」
『夜が明ける。明るくなってきた……実花の声が少しずつ、小さくなってるんだ』
「いや! いやだ、篤史」
『とにかく伝えたかったのは……実花を好きになって、好きになってもらえて、嬉しかった。短い間だったけど幸せだったってこと。おれは今とっても幸せな気分で逝くんだって』
「篤史」
『三つのお願い、忘れるなよ。実花がいい人生送ること、それがおれの一番の願い』
「篤史……行かないで」
『夜電話しているといつも……こうして切れなかったよな。そんな時どうしてたっけ?』
「……"せーの"で切ろうって、同時に切ってた」
『じゃあ、"せーの"、さよなら。……言って、実花。おれが逝けるように』
「……さよなら。ありがとう、篤史。大好きだよ」
『おれこそ……愛してる』
「私も愛してる」
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