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『菱野くん、会いたいです。会えませんか』
これで最後のメールになっても仕方ないと半ば覚悟して送った。
あんのじょう、丸一日返信がなかった。諦めかけた頃、謎めいた言葉が返ってきた。
『会いたいけど……蒼井さんはきっと怒ってるんだろうな』
会いたくないという意味だろうか。でもそんなこと関係なかった。
彼と直接会って話さなきゃいけない気がした。
『来週の土曜日。午後四時。泪橋の上で待ってます。菱野くんが来るまでずっと待ってるから』
変に遠慮していた自分に後悔していた。
会ったら、何もかも聞くんだ。力になれるかどうかなんて考えないで。
菱野幸祐くんとは、高三で同じクラスになった。
菱野くんはちょっとした有名人だった。色白で線が細くてきれいな顔立ちをしているのもあるけれど、いわゆるダブりで、私たちより一つ年上だ。
病気のせいだとか、悪い仲間と付き合ってて警察沙汰になったとか、家出してたからとか、色々噂されたが、結局のところ誰も留年した理由を知らなかった。そして新しいクラスでもあまり学校には来なかった。
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