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『明日、試験なんだ。菱野くんは……どうしてますか? いつ、学校来られるの?』
もしかしたら具合が悪くなっているのかなと思いながらも、ずっと連絡してなくて、急に友だち気取りに心配してるって思われるのが嫌だとか、今思えばくだらないことにこだわって馬鹿だったなと思う。
『そうなんだ。頑張ってね。結果出たら教えてよ。お祝いしよう』
しばらくしてきた返信がそれだった。なんだか暗に自分のことは聞くなと言われている気がして、色々聞きたいことも飲み込んでしまった。
その後、無事に合格した私は、あいわからず登校してこない菱野くんに何度もメールしたけれど、ずっと返信はなかった。
それで最後のつもりで『会いたい』とメールした。
会いたくない感じの妙な返信がようやくきたけど、それを無視してさらに『会いにくるまで待ってる』と送りつけた。
土曜日。午後四時。
三月の空気はまだ冷んやりしていたけれど、水面に跳ね返る夕陽は、あの日と同じ煌めきだった。
四時を三十分過ぎた頃、彼が重い足取りでやってきた。
去年五月に見た眼鏡の男の子。菱野くんの弟の佑介くん。
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