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今日は詰襟ではなく、グレーのタートルネックのフリースの上にスプリングコートを羽織っていた。背が菱野くんと同じくらいで、服装のせいか、中学生に見えなかった。
「……兄は亡くなりました。二月の末に」
それからは座り込んで立ち上がれない私の横で、橋の欄干にもたれて立っている佑介くんが淡々と話すのをただ聞いていた。
年末近くに具合が悪くなって入院した時にはすでに末期の腎不全になっていたそうだ。そのまま退院できることもなく、合併症で亡くなってしまった。
「兄も本当は……蒼井さんに会いたかったんだと思います」
「あのメールは……佑介くんが書いたの?」
「いいえ。兄が書いてました。いっぱい書いてたんですけど、一通も出せなかった。最後のメールを返信として送ったのは僕です」
だから少し文脈が変だったのか。
しかもお互い変な遠慮をし合ってたなんて。
「ほかのメールも見ますか?」
佑介くんの気遣うような問いに、私は泣きながらうなづいた。
END
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