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「私、一緒には行けないわ」
「どうして? ぼくたち、片時だって離れたことなかったじゃないか」
ぼくはジュリエットの綺麗な青い瞳をじっと見つめた。
けれど彼女は目をそらした。
「だって……わかるでしょ? 私たち、違いすぎるのよ」
ぼくは必死になってかぶりを振る。違うことなんてあるもんか。
ジュリエットは困ったように「ふぅ」と息を吐いた。
「あなたは家族を愛している。一方、私はここが好きなの。……考え方が違うのよ、根本的に」
ジュリエットに触れようと近づいたが、彼女は窓辺へと近づいていった。ガラス窓に冷たい風がふきつけ、カタカタと小さな音をたてる。
まだ春の匂いはしない。向かいの工場の駐車場に植っている桜は満開だけれど、ぼくにとっての春の匂いは、あれじゃなかった。
「そ、それは、ぼくの家族だもの、大好きさ。けど、その思いと君に対する想いは全然違うものなんだ。わかるだろ?」
「……わかってる。だからなおさら困るの」
ジュリエットは目を細めて答えた。
言いたいことはわかった。ぼくが無理なことを言っていることも。でも言わずにはいられない。
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