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君と過ごした時間は、まさにぼくの生涯そのものだったから。
「ねえ、子供の頃、庭を走りまわり、体中花粉だらけにして怒られたよね」
「覚えてるわ。あなたは庭の白詰草が大好きよね。私まで一緒に引っ張り回された」
「うん、甘くて優しい香りだから……って、そうじゃなくて、ぼくが言いたいのは、あのとき君も言ったじゃないか。『いつまでも仲良しでいようね』って」
なんで急に冷たくなれるんだろう。ぼくが君を意識しだしたからだろうか。ここのところ、君は女らしくなったと同時によそよそしくなった。なにより一緒に遊んでくれなくなった。
今、目の前にいるのは、ジュリエットと違う、別の女の子のように思える。
「ロミオ、もう一度言うわ。私は、ここに残る」
「……あいつと?」
ジュリエットは答えなかった。でもその沈黙が何よりの答えだ。
あいつが現れたのはほんのひと月前。ジュリエットがあいつの強引な態度に最初は反感を抱きながらも、いつしか惹かれはじめたのを彼女自身よりぼくの方が先に気づいた。
「彼は私と考え方が同じだから。それに……強いもの」
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