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「あんたは犬であの子は猫なんだから。わかってる?」
わかってるよ。ぼくは返事したが、その声はがらんとした家の中にむなしく響くだけだった。
「そっか……じゃあ行こうか」
景子はときどきぼくらの言葉がわかっているかのように答える。今もそんな感じだった。
ぼくは大人しく景子の後に従った。
運転席には少し待ちくたびれた顔のお父さん。お母さんは景子とぼくだけが戻ってきたのを見て、とたんにがっかりした。後部座席の律子がぼくを見て、優しく手招きする。
「……やっぱり、いなくなっちゃったのね」
お母さんが寂しそうに言うのがつらかった。
律子はぼくを抱きしめると、いつものように首の後ろを撫でてくれた。
「たぶん、この家が好きなんだよ。離れたくないんだと思う」
「猫は人じゃなくて家に居つくと言うからなぁ」
景子の言葉にお父さんが車のエンジンをかけながら、言葉を重ねる。
たしかにジュリエットも言っていた。『ここにいたい』って。
でも、それは、彼女の本心であって、本心じゃない。
この家にいたいんじゃなくて……あいつといたいんだ。
「あんた、ロミオのせいにしたんじゃないの?」
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