かなわぬ想い

8/8
前へ
/86ページ
次へ
 そんな彼女の隣にいるのはあいつだった。うす汚れた黒い毛。いまだに彼女にふさわしいとは思えなかったけど、ぼくが何と言おうとあいつは彼女と同じ猫なんだ。  ジュリエットはぼくらが引っ越した後の、がらんとした家の軒下であいつと暮らすのだろうか。そのうち、あいつとの子を産むのだろうか。  景子が窓を開けると、どこからともなく甘い匂いがした。  まだ、白詰草は咲かないのに。
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加