なぜそれがここに

4/6
前へ
/86ページ
次へ
「うるせーな。うちは練り物会社なんだ。お客がこんなもん持ってきてるわけないだろうが」  二時間後、商談から戻ると、それは駐車場から消え失せていた。  そんなことをすっかり忘れた羽田は、やはり鎌倉で自分用に買ってきたお菓子を食べている。その隣の席で俺は上に出す稟議書を書きながら、どうにも気になり、それについて調べた。  あの金属の棒は、いわゆるバールというものらしい。だがバールというのは製品名で、実際の名称は鉄梃(かなてこ)といい、てことして利用する大工道具である。釘抜きとして使う事もあるそうだ。色んな形や長さ、色があって驚いた。 「なぁ、あれってバールみたいなものだったよな?」 「はぁ? 何の話ですか?」  羽田の記憶力に期待してはいけないことをあらためて思い知る。 「練り物会社のうちの駐車場に何で落ちてたんだろうな……誰の持ち物だったんだ? あれはよく犯罪にも使われるよなぁ」  言いながら思い出したのだ。よくニュースで強盗などが窓を叩き割るのに「バールのようなもの」を使ったと聞く気がする。
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加