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「うるせーな。うちは練り物会社なんだ。お客がこんなもん持ってきてるわけないだろうが」
二時間後、商談から戻ると、それは駐車場から消え失せていた。
そんなことをすっかり忘れた羽田は、やはり鎌倉で自分用に買ってきたお菓子を食べている。その隣の席で俺は上に出す稟議書を書きながら、どうにも気になり、それについて調べた。
あの金属の棒は、いわゆるバールというものらしい。だがバールというのは製品名で、実際の名称は鉄梃といい、てことして利用する大工道具である。釘抜きとして使う事もあるそうだ。色んな形や長さ、色があって驚いた。
「なぁ、あれってバールみたいなものだったよな?」
「はぁ? 何の話ですか?」
羽田の記憶力に期待してはいけないことをあらためて思い知る。
「練り物会社のうちの駐車場に何で落ちてたんだろうな……誰の持ち物だったんだ? あれはよく犯罪にも使われるよなぁ」
言いながら思い出したのだ。よくニュースで強盗などが窓を叩き割るのに「バールのようなもの」を使ったと聞く気がする。
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