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とすると、あんなものがうちの会社の駐車場に落ちていることじたい、ますます不自然な気がして、気になってきた。
「なぁ、もしかして、何か盗まれてないかな?」
「……なんか私より気にしてないですか? だから、お客様の落としものとして、届けとけばいいって言ったじゃないですか」
羽田が丸いスポンジケーキを頬張りながら、呆れたように返す。
「なくなったのって、俺らが出ている間に取りに来た……ってことだよな? 強盗が」
「強盗入ったのが前提になってますけど、そんな大変なことが起こってたら、朝から騒ぎになってますよ」
確かに羽田の言うとおりだった。
何か喉に魚の小骨が引っかかっているような、嫌な感じが残ったが、現実にはブツは無くなっているし、そんなことにいつまでも拘っていられない。俺は稟議書を仕上げた。
「わかりましたよぉ、主任。スパナみたいなやつの持ち主」
それを忘れかけていた終業時刻間際、羽田がどこかから席に戻ってきて言った。
「スパナじゃなくて、バールな。……え? 持ち主がいたのか?」
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