27歳、先行き真っ暗

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「冬麻。ありがとね」 『なに言ってんの。俺の方こそじゃん。いつも言ってるけど俺のこと気にしなくていいから付き合ってる人とかいれば遠慮なく結婚するんだよ?』 「彼氏なんていないから。私にとっては冬麻が唯一の家族だよ」 両親は私が16歳、冬麻が9歳の時に離婚しており私たち姉弟は母親に引き取られる。 だけど母は新しい男を見つけてはその人に貢ぐようになり、家にお金はほとんど入れない人だった。 自分のために主にお金を使う人だったため、私たちは学生時代はかなり苦労したと思う。 高校時代はアルバイトを掛け持ちしなんとかギリギリ生活をし、プログラマーになるために家で密かに勉強していた。 もちろん私のアルバイト代だけでは生活なんてできないのは分かっており、父が母に黙って私たちにお金を渡してくれている。 それは今も続いており、普段ほとんど会うことはないが毎月1日、必ず入金してくれていた。 どこかで父も私たちに責任を感じているのかもしれない。 現在父は別の女性と再婚し子供もいる。 それでも私たちの存在を消しきれない父は罪滅ぼしのようにお金として私たちに贖罪しているんだと思う。 だから私には実質弟しか家族はいない。 冬麻だけは私がずっと守っていかなければならない、大切な存在だ。
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