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そんな体温を求めるように彼の手に思わずすり寄ってしまう。
大きくて少し骨張った指が私の首元に触れてその感触が心地いいし少し気持ちを昂らせる。
「心春。身体はえらくないのか?」
「⋯そういえばちょっと頭痛い気がするかな」
私の言葉を聞いた伊織くんはガタッと立ち上がると私の横まで近づきそのまま両手で私の顔を包み込む。
突然の行動に驚いているとさらに彼は自分の顔を私に近づける。
「えっ伊織くん?」
黙ったままの彼はコツンと私の額と自分の額を合わせる。
目を閉じた彼のまつ毛はとても長くすごく美しい。
私だけが慌てていて彼はとても冷静だ。
しばらく額を合わせたままじっとしていると、身体を離した伊織くんは少しだけ眉間に皺を寄せて私の顔を見つめた。
「伊織くん⋯」
「心春、今すぐベッドで休むんだ」
「え?」
「熱がある」
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