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体調が悪いことに気づいてしまうとさらに悪化する気がする。
ぐんぐんと熱が上がってきたのか身体全体が熱く、頭の痛みもひどくなってきた。
「勝手に入って悪いが取りに行ってくる。ここで待ってろ」
「ごめんね⋯」
私の頭をポンっと撫でた伊織くんは寝室を出ていく。
夜ご飯の片付けもあるし仕事の締切もあるというのにこんなタイミングで熱が出てしまうなんて。
それに1番は伊織くんの両親への挨拶が明日だというのにこのままでは行けなくなってしまう。
それが1番申し訳ない。
部屋に戻ってきた伊織くんの手には私のタンスから引き出してきた部屋着用のハーフパンツのセットアップが握られていた。
「伊織くん、ごめんね。明日ご両親に挨拶の予定だったのに」
「そんなこと気にするな。心春の身体が第一だよ」
「でも⋯⋯」
「どんなことよりも俺は心春が大切だ。まずはちゃんと治すことだけ考えればいい」
熱が出て弱っているせいか、いつも以上に伊織くんの言葉が甘くて心にぐっと染み込んでくる。
結婚して早々伊織くんには迷惑をかけてしまった。
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