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"結婚しよう"
そうプロポーズした相手は高校の同級生だった。
大した関係ではなく特別仲がいいというわけでもない相手だ。
彼女がお金に困っているという事実を知った俺は、交換条件を出しそれを餌に彼女との結婚にまでこぎつけた。
なぜ俺が心春にそう提案したのか、それはまだ彼女には言えていない。
(理由を知ったら心春はドン引きするかもしれないな)
そんな新婚生活とも言えない同棲生活の中で俺は日を増す事に彼女への想いが増していた。
姿や彼女の存在を認識する度にその想いが溢れそうになる。
いつものように仕事から帰宅するとキッチンで心春が料理を作ってくれていた。
リビングに入る扉を開けると心春が俺を出迎えてくれて、自然と笑顔になれる。
「ただいま」
「おつかれさま。もうご飯できるよ」
俺が帰るタイミングに合わせて食事を準備してくれている健気さが可愛らしいとさえ思う。
スーツを脱ぎ、手洗いうがいを終えた俺は彼女の元へと向かった。
髪をひとつにまとめた心春のうなじがちらっと見えてよこしまな気持ちが心に生まれる。
それをはぐらかすように気付かないふりをして、心春の斜め後ろに立ち耳元に近づき話しかけた。
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