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「心春、身体はえらくないのか?」
質問に対して、少しだけ頭が痛いと答えた心春の熱をよりしっかり測るために俺は立ち上がり、驚いた表情の彼女の顔を両手で包み込んだ。
額を合わせるとよりダイレクトに彼女の熱を感じる。
俺に触れられることを予想していなかった心春はひとり動揺しているようだがジッと大人しく受け入れてくれていた。
心春と過ごしたり一緒に向かい合って笑いあえる時間に甘えて彼女のことをもっと注意深く見ていなかった自分に腹が立つ。
「熱がある」
「これくらいなら大丈夫だよ、まだ片付けもあるから」
熱があると自覚してもなお、心春は家事を続けようとする。
椅子からガタッと立ち上がった彼女の身体が大きくグラリと傾き倒れそうになったところを間一髪支えた。
細くて触れただけでも壊れてしまいそうな華奢な身体を抱きかかえ、俺はそのままお姫様抱っこする。
俺の腕にすっぽりと包み込まれた身体は全体的に柔らかく不思議といい香りもした。
服越しにも伝わってくる熱に俺は早々に彼女を休ませるため寝室へと運んだ。
大人しく俺の腕の中でじっとしている心春の頬は赤く火照っており、それが熱によるものなのかそれとも、俺に触れられているからなのかは分からない。
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