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そっとベッドの上に心春を寝かせると、とろんとした視線と絡み合った。
熱が上がってきたのかいつもに増して色っぽい表情にゴクッと生唾を飲み込む。
「とりあえず休むんだ。着替えはどこにある?」
「部屋の1番下のタンスの中⋯」
「勝手に入って悪いが取りに行ってくる。ここで待ってろ」
「ごめんね⋯」
いつもより元気がないその返事に心が痛む。
ここまで発熱してしまうほど彼女の体調の変化に気づけなかった自分に腹が立った。
きっと俺に心配かけまいとギリギリまで我慢していたんだろう。
俺たちが本当の夫婦じゃないから、そんなことさえ言おうとしてくれない。
それが悔しくて自分が情けなくてより腹が立つ。
部屋を出た俺はそのままの足で心春の部屋に足を踏み入れた。
部屋の中の色味はリビングたちと同じような配色を使用しているためグレーや白を基調としているものの、カーテンは心春の希望のラベンダー色のものを用意している。
そのためか他の部屋よりも明るい雰囲気を感じると同時に心春の身体からも香ったほんのり甘い香りが部屋中を埋めつくしていた。
心春の部屋はとてもシンプルで部屋にはほとんど物がない。
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