伊織side 〈触れたい衝動〉

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仕事用のモニターやパソコンが置かれている白いデスクと部屋の中央に置かれているテーブル、そしてライトしか置かれていない。 元々部屋についているウォークインクローゼットにも少しだけ服がハンガーにかけられており、更にはタンスも置かれているがその中にもあまり服は入っていなかった。 心春の部屋に入ったのは初めてだったがまさかここまで物が少ないとは思っていなかった。 彼女の風邪が治ったらたっぷり服などを買ってあげようと思う。 かなりプライベートなタンスの中を開けることに少し罪悪感を感じながらもそっと手をかけた。 中は綺麗に整頓されており心春から聞いた場所を確認するとそこにはハーフパンツのセットアップが入っている。 それと常備薬として置いてある風邪薬、コップ1杯の水を手に心春が待つ寝室へ戻ると俺の顔を見た途端、安心しきったように笑みを浮かべた。 だがそれと同時に眉を八の字にさせ口を噤む。 「伊織くん、ごめんね。明日ご両親に挨拶の予定だったのに」 「そんなこと気にするな。心春の身体が第一だよ」 「でも⋯⋯」 「どんなことよりも俺は心春が大切だ。まずはちゃんと治すことだけ考えればいい。それより薬。飲むんだ」 なんだそんなことか、と正直思った。 俺にとっては心春が第一のため、そんなことちっとも気にしていない。 薬を受け取った心春はゴクッとそれを飲み干す。
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