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「心春。おはよう。もう身体は大丈夫なのか?」
キッチンで作業していた手を止めた伊織くんは私に近寄ってきた。
今日は本来であれば伊織くんのご両親に挨拶に行く予定だったため私たちの仕事は休みだ。
そのため髪も下ろし黒いシャツとパンツのラフなスタイルの伊織くんの姿がとても新鮮で普段は見せない姿を見れることにほんの少しの優越感を感じる。
近づいてきた伊織くんは躊躇なく私のおでこに手を当て体温を測った。
(伊織くんの手って大きくてゴツゴツしてるのに優しんだよな…)
すっかり熱も下がり顔色も良くなったことを確認した伊織くんは口角を上げてにこりと微笑んでくれる。
それが心底ホッとしたような表情でかなり心配をかけてしまったんだと、心が痛んだ。
「熱は下がったみたいだな」
「伊織くんのおかげだよ。ありがとう」
「心春のためなら俺はなんだってするよ」
私の頬に触れながらそう呟く伊織くんは本当に私のためならなんだってしてしまいそうなそんな危うささえ感じた。
触れた部分から彼の体温が伝わりドクンドクンと心臓の脈打つスピードが早まって行くのが分かる。
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