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「おかゆ作ってみたけど食べるか?」
「うん…お腹すいたから食べたい」
「すぐ準備するから座って待っててくれ」
そう言った伊織くんは慣れた手つきで私の腰に腕を回すとそのままダイニングテーブルにエスコートしてくれた。
あまりにも自然な流れにスマートだなと思うと同時に距離が近くドキドキとまた体温が上がったのが分かる。
(伊織くんってこんなふうに自然にできておかゆまで作れるなんてハイスペックな人だよね)
椅子に座って待っているともくもくと湯気が立ち込めるひとり用土鍋が私の前に置かれた。
卵がたっぷりと使われており出汁の香りが鼻腔をくすぐりお腹がグーッと鳴る。
(美味しそう…)
「熱いからふーふーしてやろうか」
「えっ」
(伊織くんが"ふーふー"って言うなんてなんか可愛い…)
まさかそんな可愛らしい言葉を伊織くんが言うなんて思ってもいなくて意外な一面を見た気がする。
一緒に暮らして契約結婚をしなかったら伊織くんが本当はこんなふうに話してくれる人なんてずっと知らないままだったんだ。
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