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「伊織くんって意外と笑ってくれるんだね」
「⋯そうか?」
「うん。高校の時は無口でその⋯無愛想だったから」
「間違ってないよその印象は」
テーブルに肘をつき、手で顎を支えるようなポーズで私を見つめる彼の口元は楽しそうに弧を描いていた。
寧々ちゃんも言っていたが彼は無口で無愛想。
整った顔立ちをを持っているため女子からの人気は圧倒的だったにも関わらず全くなびかない、そんな孤高の存在だった。
だけど同性に見せる姿はまた違って素直な一面もあるらしく、それを私たちはほとんど見たことがない。
そう思っていたのに、一緒に過ごすにつれてそれは私たちの勘違いなのではと思うようになった。
私を見つめる瞳はなぜか甘く蕩けるような優しげな視線で、私が作るご飯を嬉しそうに食べてくれたり真っ直ぐ見つめながら話を聞いてくれたり。
ちゃんと見ていれば彼の喜怒哀楽が伝わってくる。
だけど伊織くん本人はそうは思っていないらしい。
「心春以外には無口で無愛想だと思う」
「⋯私だけには特別ってこと?」
(やば⋯絶対今の失言だ⋯。調子に乗ってると思われちゃう⋯)
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