5503人が本棚に入れています
本棚に追加
/160ページ
自分で言っておきながらその言葉に後悔した。
まるで"伊織くんにとって私は特別だ"と自負していることを、正直に自白してしまったようで死ぬほど恥ずかしい。
会社のみんなや同級生の女子たちじゃ見られない姿を見られていることに勘違いしてしまったのかもしれない。
恋だとか愛だとか、そんな感情があるわけないというのに。
「⋯⋯⋯そうだよ。心春だけは特別だから」
(どうして好きな人に向けるみたいな甘ったるい視線を私に向けるの⋯?)
契約結婚だというのに伊織くんは私に触れたりおでこにキスをしたり、まるで本当の夫婦のように接してくれる。
私に向ける視線も言葉ではないが愛しいと伝えられているように感じるほど甘い。
「心春だからこんなふうに甘やかしたいんだよ」
「えっ⋯⋯それは⋯」
(一体どういう意味で言ってるの?)
そう聞きたい言葉をぐっと飲み込み真意を隠したまま微笑む伊織くんの顔を見つめる。
お互いの利益の一致から生まれた契約なのだから愛だの恋だのそんなこと言ってられない。
最初のコメントを投稿しよう!