曖昧なキス

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少しだけ緊張したように背筋をピンッと伸ばして自己紹介する冬麻の姿を見て思わずクスッと笑ってしまう。 明らかに緊張しているのが伝わってきて面白い。 「よかったら持つよ」 「え、いいんですか!すみません、ありがとうございます」 冬麻が持ってきたキャリーケースを受け取るとそのまま伊織くんはリビングに案内してくれた。 廊下を歩きながらキョロキョロと辺りを見渡す冬麻はそわそわしているようだ。 「冬麻、お昼まだだよね?」 「うん。もしかして姉ちゃんが作ってくれるの?」 「そのつもりだよ。冬麻の好きな唐揚げ作るからね」 「まじか!最高〜姉ちゃん大好き!」 冬麻は私が作る唐揚げが大好物で、帰ってくる度に作って欲しいと希望があるくらいには気に入ってくれている。 今回も冬麻のために唐揚げを前日から下味をつけて仕込んでいたため、あとは揚げるだけの状態だ。 リビングに着いた冬麻はお土産を買ってきてくれたようでそれを伊織くんに渡していた。 冬麻の住む寮の近くにあるケーキ屋さんの私の大好きなバームクーヘンのようだ。
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