曖昧なキス

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「これ、姉ちゃんが好きなんですよ。よければ食べてください」 「ありがとう。あとでいただくことにするよ」 冬麻を騙していることには心が痛むが、伊織くんと冬麻が仲良さそうに話している姿を見るのはすごく嬉しい。 滞りなく過ごすための演技だって分かってはいるが、まるで本当の家族のように感じた。 「冬麻くんよかったら座ってて。お昼ができるまでコーヒーでも入れるよ」 「すみません、ありがとうございます」 ダイニングテーブルに冬麻を残し、伊織くんもキッチンにやって来た。 そんな彼は下味で漬けた唐揚げに片栗粉と小麦粉を混ぜた粉をまぶす私の耳元で吐息をかけながら囁く。 (絶対わざとやってるでしょ⋯!) 「いい子だな、心春の弟」 「うん。最高に優しい弟なんだ」 私と冬麻はたった2人の家族だからこそ、弟のことをそんなふうに褒めてもらえてすごく嬉しい。 冬麻は姉の私が言うとブラコンと言われるかもしれないが、本当にいい子で優しい子だ。
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