曖昧なキス

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コーヒーを準備した伊織くんはカップを2つ持ち、ダイニングテーブルに座る冬麻に差し出す。 向かい合うように座る姿を見つめながら私は唐揚げを順番に揚げていった。 その間にサラダの準備と豚汁をもう一度温める。 冬麻が帰ってくるとのことでいつもよりも気合い入れてたくさん準備してしまった。 「あの、俺はなんて呼んだらいいですかね?義兄さん?伊織さん?」 「好きなように呼んでくれて構わないよ」 「なら伊織さんって呼ばせてください!」 人懐こい笑顔を見せ一瞬で誰とでも仲良くなれるのは冬麻のすごいところだと思う。 フレンドリーですぐに距離を詰められる冬麻だからこそ、無口で無愛想な伊織くんともこんなふうに打ち解けられるのかもしれない。 「俺、めっちゃびっくりしてて。姉ちゃんが突然結婚したって言い出して、付き合ってる人なんていないって聞いてたのに」 「冬麻!いいんだって、その話は」 「いやいやだって驚くじゃんか!結婚したと思えば相手は俺でも知ってる東雲ホールディングスの方だなんて」 「そりゃ驚くよな。俺と心春は高校の同級生で、たまたま再会して俺からアプローチしたんだ」
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