曖昧なキス

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伊織くんはうまいように話を合わせてくれて本当に助かる。 あながち間違いではないかもしれないが、私たちの結婚は契約結婚で本当の夫婦ではない。 だからこそ冬麻の前でボロが出ないように気をつけなければならなかった。 伊織くんのことだからそれはおそらく大丈夫だろうけど。 「へえ伊織さんからなんですね!姉ちゃんのどんなところが良かったんですか?」 「冬麻!そういうの聞かなくていいから」 「大丈夫だよ心春」 冬麻の無茶ぶりな質問にも誠実に答えようとしてくれる姿に好感度がどんどん上がっていく。 止めておきながら、私自身も伊織くんがどんなふうに答えてくれるのか正直気になった。 契約結婚だとは分かっているけど、どんなふうにその質問に答えるのか興味があったため、揚げ物をしながら耳だけは二人の会話に集中する。 「そうだな⋯高校の時から、誰がやってもいいことを何も言わずにやってくれる子だった。誰よりも優しくて、自分のことを後回しにして誰かのために頑張ろうとする姿を見て、俺が守ってあげたいって思ったんだ」 「へえ⋯伊織さん、姉ちゃんのことよく知ってるんですね。ほんとそうなんですよね、姉ちゃんって第一優先俺だから、自分のこといつも後回しなんですよ」
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