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だからこそ私は冬麻のためならなんだってしたいと思えるし、なんだってできるんだ。
やりたいことをやらせてあげたいし、そのためだったら私はどれだけでも頑張れる。
だけど私たちは冬麻に大きな嘘をついていた。
それだけはとても申し訳なく思うし、罪悪感を感じないわけじゃない。
本当に私たちを夫婦だと思ってるだろうし、祝福してくれている冬麻の気持ちを考えると悪いことをしたなと思う。
でも私は弟に嘘をついていたとしても、それで冬麻が不自由なく暮らせるならこんな罪くらい痛くもなんともない。
「心春と冬麻くんの仲の良さに少し妬けるくらいだったよ」
何気ない言葉なのかもしれないが私には伊織くんが嫉妬する理由が分からない。
私たちは姉弟で、伊織くんが妬く理由にはならないはずだ。
「なんで伊織くんが冬麻に妬くの?」
「⋯俺だって心春の家族なのになって思っただけだよ」
(そんな深みを持たせた言い方しないでほしい。私たちはあくまで契約結婚の関係なのに、それ以上の何かがあるのかと期待してしまう自分が嫌だ⋯⋯)
伊織くんの言葉を都合のいい方向に捉えようとしてしまうのは、私が彼に惹かれているからなのだろうか。
どちらにしても本心を確認するのは怖くてできない。
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