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「さて、寝ようか心春」
「うん⋯そうだね」
リビングの電気を消した私たちは2人揃って寝室の扉を開けてベッドへと入る。
2人で並んで寝るには大きすぎるキングサイズのベッドは、私たちが距離を取って寝転んでも十分すぎるほどの広さだ。
今日あった出来事を思い出しながら目を閉じていると、私の隣で寝返りを打ちこちらを向いて伊織くんが呟く。
「心春。ずっと頑張ってきたんだな」
「っ!」
「冬麻くんの話を聞いてそう思ったよ。弟を守るためにずっと1人で気を張って生きてきたんだよな」
確かに私は冬麻と2人で生きるために必死だったと思う。
自分が冬麻を守らなければと思いながらずっと生きてきたことが、こんな形で認められるなんて思ってもいなかった。
「これからは1人じゃない。もう1人で頑張らなくていいんだ」
「⋯っ、なんで、そんな優しいこと言うの⋯?」
涙が溢れそうになるのを堪えて伊織くんの顔を見ると、優しく目を細めた彼の切れ長の目と視線が絡む。
誰も言ってくれなかった言葉を、言って欲しかった言葉をくれたのは契約結婚の相手で、伊織くんにとっては深い意味なんてないはずなのに、私にとってはそれがすごく大きな意味を持っていた。
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