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泣きそうになる私の身体を伊織くんはぎゅっと自分に抱き寄せる。
ドクンドクンと心地いい心音が耳に響き、不思議と心が落ち着いていくのが分かった。
「心春にしか言わないよこんなこと」
そんな甘い言葉を囁かれたら勘違いしてしまう。
もしかしたら伊織くんも私と同じ気持ちを持ち始めてくれているのかな、と。
そんなわけないのに、そう思って浮かれる自分がバカバカしい。
だけどそれでも私には必要な言葉だったのかもしれない。
伊織くんの大きな腕の中にすっぽり包み込まれ体温が溶け合い、どんどん安らいでいくのが分かる。
こんなに安心する腕の中は私は初めてだった。
「心春。キスしたい」
「えっ?!」
想像もしていなかった言葉に目を丸くさせ伊織くんの顔を見つめる。
私の頬に大きな手を添えた伊織くんは欲情を隠した瞳で私を覗き込んだ。
髪が指にからめとられ一気に空気が甘美なものに変わる。
心臓が脈打つスピードが早まり、同時に顔に熱がカーッと集まり赤く染まった。
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