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「嫌だったら殴ってでも止めてくれ」
「そん、なこと⋯⋯」
(できるわけない⋯殴って止めるなんて、伊織くんずるいよ⋯⋯)
ゆっくりと目を閉じた伊織くんは私に顔を寄せそのまま唇を重ね合わせた。
柔らかくて温かい感触が唇に伝わり心臓がバクバクと激しく脈打つ。
触れるだけのキスなのに、すごく甘くて幸せで涙が一筋私の頬を伝う。
緊張で唇が震えていたかもしれない、それくらい彼とのキスはまるで高校生の初キスのようなドキドキ感でいっぱいだった。
今までどうやってキスをしていたか忘れてしまったのかと思えるほど、私は緊張感でいっぱいだ。
そんな私の気持ちをよそにどんな想いで伊織くんが私にキスをしているのかは分からない。
それでも私が拒否できなかったのは、彼に少なからず惹かれているからだ。
契約結婚だというのに私は伊織くんにそれ以上の感情を抱き始めてしまっている。
どれくらい口付けを交わしていたのか、私の唇から伊織くんが離れると名残惜しさが残った。
そんな感情を抱くなんて傲慢にも程があるというのに。
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