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「心春。もう1回、してもいい?」
「⋯聞くのは、ずるいよ⋯⋯」
「心春の嫌がることはしたくないから」
そう言って私に選択権を委ねるところは伊織くんのずるいところだと思う。
私が拒否しないことをきっと分かっているはずなのに、あえて私に答えを言わせている。
伊織くんの腕の中で彼を見上げながらそっと身体に擦り寄った。
それに応えるように伊織くんは私の身体を隙間なく抱きしめてくれる。
「もう1回、して?」
私の答えに嬉しそうに微笑んだ伊織くんはさっきよりも少しだけ雄々しく私の唇を奪った。
触れるだけのキスではなく、ほんの少しだけ舌を絡め合う大人なキスはとても官能的だ。
「んっぁ⋯⋯」
一瞬だけ漏れた甘い吐息を伊織くんに聞かれたことがものすごく恥ずかしくて一気に顔が火照っていく。
こんなえっちな声を出してしまったことに羞恥心を感じてしまい、唇を離したあとも彼の顔を直視できない。
そんな私の気持ちを汲み取ってくれたのか、伊織くんは私の表情を隠すように胸の中に抱き抱える。
すっぽり包み込まれたことによって顔が隠され、真っ赤に染まった表情を見せることなく済んだ。
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