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こんなセリフ言うつもりなんてなかった。
ただほんの少し、伊織くんの真意の分からないドキドキさせられるセリフに対抗したかっただけの、出来心だったのに。
何かのスイッチを押してしまったのかバサッと起き上がった伊織くんは私の腕をベッドに張り付け組み敷いた。
突然の行動に頭が回らず伊織くんの顔をただ見つめることしかできない。
私を組み敷くその力は紛れもなく男の人で、全くビクともしないのに不思議と恐怖はない。
伊織くんの瞳の奥に一瞬雄っぽい獣のような鋭さが帯びたことを私は見逃さなかった。
「伊織、くん⋯?」
「あんなセリフ、どこで覚えたの?」
「伊織くんが言ったんだよ」
「⋯⋯俺以外に絶対あんなこと言うなよ」
その独占欲は一体どこからやってくるものなのか。
契約結婚の妻に対する感情とは思えない。
伊織くんは私の腕をぎゅっと握る力を強め、そのまま唇に触れるだけのキスを落とした。
そうされると分かっていながら私はそれを受け入れるように目を閉じる。
(今回はしてもいい?って聞いてこなかった⋯⋯)
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