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「あ、聞かずにキスして悪かった」
「確信犯のくせに⋯」
「バレたか」
お互いどちらからともなく笑いあった私たちは本当の夫婦のようだった。
この笑顔を見ていると私だけが特別なんじゃないかと都合よく考えてしまう。
私だけに向けられる笑顔や言葉は、特別なんじゃないかって思えてきた。
自分の中に芽生えた気持ちにゆっくりと蓋をするように伊織くんから視線を逸らす。
「起きよう伊織くん。冬麻が今日は帰る日だから見送らないと」
「そうだな」
起き上がった私から伊織くんの熱が離れていきそれがとても寂しく感じる。
もう少しこのままでいたかった、そう思う私はなんて傲慢なのだろうか。
寝室を出た私は自分の部屋へと向かい、タイトめなワンピースに着替える。
髪も軽く整えて冬麻の眠る部屋をノックすると既に身支度をある程度終えていたようだ。
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